NEWS

「UNIZONE 2025 Rd.4」競技レポート

国内で唯一、JAF(日本自動車連盟)の公認を受けたeモータースポーツ大会「UNIZONE」。本大会を主催する一般社団法人 日本eモータースポーツ機構(以下「JeMO」)は、2025年8月19日(火)に、2025年シリーズ第4戦を開催しました。

熱い声援が飛び交う各会場

今回も「HOME&HOME形式」で行われ、名古屋、熊本、東京、浜松、群馬の各拠点は、シリーズ終盤ならではの緊張感と高揚感に包まれました。観客席では応援グッズを手にしたファンがドライバーに熱い声援を送り、予選や決勝の度に歓声とため息が飛び交う、まるでリアルレース会場のような一体感に。

ここまでのシリーズを牽引してきた武藤選手(名古屋)、小出選手(名古屋)、そして黒沢選手(熊本)。第4戦はこの3名を中心に、ドライバーズランキング上位が入れ替わる可能性を秘めた大一番となりました。わずかなミスがチャンピオン争いに直結する緊迫感のなか、各選手が渾身のアタックと攻防を繰り広げ、会場も配信も終始ヒートアップ。第3戦まで以上に、誰がシリーズ王者に近づくのか目が離せない展開となりました。

さらに、今大会では視聴者投票によるスプリントレースのグリッド決定といった新しい試みも導入され、レース戦略や順位変動がよりダイナミックに。白熱するドライバーズチャンピオン争いに新たな緊張感を加える一戦となりました。

接戦の予選タイムアタック

今回の予選は事前に実施され、ここでも武藤選手(名古屋)が圧倒的な速さを見せつけました。2番手以下を0.3秒以上引き離すタイムでポールポジションを獲得し、シリーズ後半戦でもなお勢いは衰えず。小此木選手(群馬)と荒川選手(熊本)が僅差で続き、上位勢は接戦となりました。名古屋勢は、今回は小出選手に代わり急遽参戦した齊藤選手(名古屋)も準備不足の中4番手に食い込み、決勝レースに向けて理想的なグリッドを確保しています。

混乱生じるスプリントレース①

スタート直後、見事な加速を決めた小此木選手(群馬)がホールショットを奪い、ポールスタートの武藤選手(名古屋)を抜いてトップに浮上。その後は小此木選手を先頭にこう着状態が続きましたが、迎えた4周目の1コーナーでドラマが起こります。わずかにラインを外した小此木選手のインを突いた武藤選手が接触。小此木選手(群馬)はスピンを喫し、さらにコース復帰時に齊藤選手(名古屋)と接触してしまい、両者とも大きなダメージを負う波乱の展開となりました。

この混乱を抜けトップに立ったのは荒川選手(熊本)。しかし後方からは武藤選手が猛烈に追い上げ、終盤にはテール・トゥ・ノーズの接近戦に。荒川選手(熊本)は武藤選手(名古屋)に対し、接触時のペナルティを考慮してほぼ譲る形で2位にポジションを落としました。

ゴールラインを最初に通過したのは武藤選手(名古屋)でしたが、レース後の審議で10秒のタイムペナルティが科され、正式結果は荒川選手(熊本)が1位に繰り上がり。Saishunkan Sol 熊本にとっても荒川選手(熊本)にとっても、シリーズ初勝利となる嬉しい瞬間となりました。

波乱のスプリントレース②

スプリントレース②は、予選上位半分がリバースグリッドとなるスタートグリッドでスタート。ポールポジションの黒沢選手(熊本)はまずまずのスタートを決めて1位をキープします。しかし、2周目に入ってもペースが上がらず、背後につけた齊藤選手(名古屋)がスプリントレース①の武藤選手(名古屋)と同じようにインを突いてオーバーテイクを仕掛けます。

ところが再び接触が発生。黒沢選手(熊本)はスピンを喫して後方に沈み、トップ争いから脱落。齊藤選手(名古屋)はそのまま1位でチェッカーを受けるものの、レース後の審議で10秒のタイムペナルティが科されます。

これにより、2位でゴールしていた小此木選手(群馬)が繰り上がりでスプリントレース②の勝者に。スプリントレース①の雪辱を果たす形で、小此木選手(群馬)が貴重な勝利を手にしました。

喜び溢れたスプリントレース③

スプリントレース③はフルリバースグリッドでの開催。ポールポジションの小山選手(群馬)がまずまずのスタートを決め、さらにそのすぐ後ろから木村選手(東京)も素晴らしい加速を披露。1コーナーでは木村選手(東京)が仕掛けるかという間合いまで詰めましたが、ここは小山選手(群馬)が冷静に抑え、トップをキープしました。

フルリバースグリッドということもあり、マスタングと鈴鹿の相性が良い選手たちが後方から次々に仕掛け、前を攻め立てる展開。各車が様子を伺う中、齊藤選手(名古屋)がデグナーで荒川選手(熊本)と接触してスピン、後方に沈んでしまいます。

3周という短期決戦の中、小山選手(群馬)は最後まで見事な集中力を見せ、3周目までトップを死守。しかし最終コーナーの立ち上がりで木村選手(東京)がぴたりと合わせ、1コーナーではアウトからギリギリのブレーキング勝負。見事なオーバーテイクを決め、1位に躍り出ました。

このレースは木村選手(東京)がトップでチェッカーを受け、東京ヴェルディにとっても今大会初勝利となる貴重な一勝に。惜しくも2位となった小山選手(群馬)も、限られた練習時間の中で着実に成長を見せ、大会初の表彰台を獲得しました。

グリッド順も見どころのスプリントレース④

スプリントレース④は、今大会から新たに導入されたファン投票でスタートグリッドが決定。投票結果により、各地のファンの声が反映されたユニークな順位でレースがスタートしました。

ポールポジションは小此木選手(群馬)。3番手スタートの百瀬選手(浜松)が素晴らしいダッシュを決め、対照的に木村選手(東京)はホイールスピンにより出遅れ、後方に沈む苦しい展開となります。

スタートを決めた2台はTGRコーナーからコカコーラコーナーまでサイド・バイ・サイドの攻防を繰り広げ、百瀬選手(浜松)が若さあふれるブレーキングでトップを奪取。小此木選手(群馬)は2位で続きます。さらにアドバンコーナーでは齊藤選手(名古屋)と木村選手(東京)が僅かに接触し、齊藤選手(名古屋)はスピンを喫してストップ。代役参戦の難しさを痛感させられる展開となりました。

各所で接近戦やアクシデントが続く中、驚きを呼んだのは武藤選手(名古屋)。8番手スタートからわずか1周で3位までジャンプアップする華麗なオープニングラップを披露し、速さだけでなく老練なレース運びも見せます。しかし、その武藤選手(名古屋)をさらに沸かせたのが黒沢選手(熊本)。ストレートでピットウォールぎりぎりまでマシンを寄せ、武藤選手(名古屋)をオーバーテイク。レース後、武藤選手(名古屋)が「あれは本当に痺れました」と語るほどの鮮やかなパスでした。惜しくもレース後の審議でコース外追い抜きと判定されペナルティとなったものの、観客を魅了する走りでした。

トップ争いでは百瀬選手(浜松)が最後まで集中を切らさずトップを守り抜き、UNIZONE初勝利を獲得。第3戦からの参戦ながらHOME&HOMEという独特の舞台にも早くも順応し、その速さを見せつける一戦となりました。

見どころ詰まったスプリントレース⑤

スプリントレース⑤は予選順位どおりのグリッドでスタート。ポールポジションの武藤選手(名古屋)が完璧なスタートを決め、得意とする“逃げる展開”に持ち込みます。

しかし、1コーナーでは小此木選手(群馬)、齊藤選手(名古屋)、兒島選手(東京)の3台が絡むクラッシュが発生。このアクシデントにより齊藤選手(名古屋)は無念のストップとなり、名古屋OJAと齊藤選手(名古屋)にとっては苦しい大会となってしまいました。

3周目に入ると、兒島選手(東京)を黒沢選手(熊本)と百瀬選手(浜松)が追い立てる展開に。まずストレートで黒沢選手(熊本)がOTSを使い鮮やかにオーバーテイク。続くダンロップでは百瀬選手(浜松)がやや強引な飛び込みで並びかけ、ポジションを奪います。百瀬選手(浜松)の思い切りの良さも光りましたが、それを冷静に受け止め、無理をせず次のチャンスにつなげる兒島選手(東京)の視野の広さと堅実さも印象的でした。開幕戦から一貫して“ポイントを持ち帰る”ことを重視する彼のレーススタイルは、リアルレースでトップチームのエンジニアを務める経験が活きていると再認識させられる瞬間です。

レースは最後まで危なげない走りを見せた武藤選手(名古屋)が逃げ切り勝利。2位には徐々に本来の速さを取り戻してきた黒沢選手(熊本)が入り、久々の表彰台を獲得。3位には好調を維持する百瀬選手(浜松)が続き、今大会でも存在感を示しました。

次戦はいよいよ最終戦

ドライバーズチャンピオン争いは、武藤選手(名古屋)が今大会の勝利で一歩抜け出す形となり、ランキング首位をしっかりと固めました。シーズン序盤から安定した速さと堅実なレース運びでポイントを積み上げてきた強さが、ここにきて一層際立ちます。しかし、ここで気を緩めるわけにはいきません。最終戦では逆転を狙うライバルたちが一段と攻めの姿勢を強めてくることは必至であり、まさに“王者の走り”が試される舞台となります。

一方で、チームランキングでは2位争いが熾烈を極めています。Saishunkan Sol 熊本と遠州ハママツモータースの差はわずか6ポイント。わずかなリザルトの差で順位が入れ替わる状況であり、どちらのチームが意地を見せるのか、戦略面も含めて見応え十分です。特に熊本は黒沢選手(熊本)を中心に復調の兆しが見え、浜松も百瀬選手(浜松)の勢いが加速中。チームメイトとの連携や、どのドライバーがポイントゲッターとして機能するかが勝敗を左右するでしょう。

次戦はいよいよシリーズ最終戦。ドライバーズチャンピオンとチームランキング、双方のタイトルが懸かったまさに“運命の一戦”です。1周ごとに順位が入れ替わるスプリントレースの駆け引き、メインレースでの戦略、そして一瞬の判断ミスが命取りになる緊張感──UNIZONEらしい手に汗握るドラマが待っています。果たして王者の座に就くのは誰か、そしてどのチームが最後に笑うのか。シリーズの結末から目が離せません。