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「UNIZONE 2025 Rd.1」競技レポート

国内で唯一JAF(日本自動車連盟)の公認を受けたeモータースポーツ大会「UNIZONE」を運営する一般社団法人日本eモータースポーツ機構(以下「JeMO」)は、2月24日(祝)にビエント高崎 ビッグキューブにて2025年リーグ開幕戦を実施しました。
当日は 300 名を超える来場者を迎え、国内トップレベルの e-Motorsport リーグにふさわしい熱気あるレースが展開され、様々な会場イベントも行いました。

2月24日、ビエント高崎でついに幕を開けたUNIZONEシリーズ。記念すべき開幕戦ということもあり、会場は選手、スタッフ、観客の皆さんの熱気と期待感に包まれていました。

開幕前の選手たちの意気込み

開幕を前に、事前に複数の選手に今シーズンへの意気込みを伺いました。中でも今シーズンの注目選手である名古屋OJAの武藤選手は、「プレーオフからではなく、レギュラーシーズンとしてオンラインとオフラインが混在する形式の大会は珍しいです。環境が変化する中で、安定して自分の実力を最大限に出し切ることは簡単ではないと思います。そんな状況の中で、チームメイトの小出選手、斎藤選手とどれだけ念入りな準備をして臨めるかが、勝敗を分ける重要なカギになるでしょう」と、冷静かつ鋭い分析を交えたコメントをしてくださいました。

一方、実車ドライバーとしても知られるSaishunkan Sol 熊本の荒川選手は、「普段から実車でさまざまな種類の車両に乗らせていただく機会が多く、その経験は今回の大会でも大きな強みになると感じています。もちろん自宅で日常的に練習しているシミュレーション環境とは異なりますが、実際のレースで培った感覚やスキルを活かし、大会でもしっかり結果を残していきたい」と、実車経験者ならではの力強いコメントを残してくれました。

開幕戦を迎え、各選手がそれぞれの強みをどのように発揮していくのか、非常に楽しみなシーズンのスタートとなりました。

緊張が走る開幕戦前日

開幕戦前日の公式練習では、各チームの選手が大会から支給された筐体を念入りに調整する姿がありました。特に、東京ヴェルディレーシングの兒島選手、遠州ハママツモータースの田中選手はエンジニアとしての経験を活かし、チームメイトが一番気持ちよく走れるドライビングポジションを慎重に調整するなど、ドライビング以外の面でもチームに大きく貢献する姿勢を見せていました。

またこの事前練習では、予想通り名古屋OJAの武藤選手、小出選手が素晴らしいタイムを記録し注目を集めていましたが、それ以上に驚きを与えたのはSaishunkan Sol 熊本の黒澤選手でした。
今回の大会に参加する選手の中では最年少ながら、スーパーフォーミュラーで行われる予選に向けた練習走行でトップタイムを叩き出すなど、目を見張るようなパフォーマンスを披露。その圧倒的な速さから「ジャイアントキリング」を予感させる走りを見せ、観る者の期待を一層高めてくれました。

決勝への期待高まる予選タイムアタック

迎えたスプリント予選。今回の予選方式はスーパーラップ形式で、各選手が順番に1周のアタックラップを競います。

この方式では、後半に出走する選手が先に走った選手の状況を参考にできるため、後半組が有利とされています。その影響もあり、1番手の田中選手はコースコンディションを掴めず、ロックアップやアンダーステアが出てしまい、タイムをまとめることが難しかったと、予選後に悔しさをにじませていました。
しかし田中選手はすぐにチームメイトの瀬田選手にフィードバック、その情報を活かした瀬田選手は見事なタイムを記録し、4番手のポジションを獲得。チームとして決勝に望みをつなぎました。

続いて出走した群馬ダイヤモンドペガサスは、実車でも活躍する小山選手と小此木選手がアタック。久しぶりのiRacingとなった小山選手は苦戦しつつもタイムを残し、小此木選手へバトンをつなぎました。小此木選手は、前年のe-モータースポーツ世界大会で世界2位の実績を持ち注目されていましたが、一時はポールタイムを記録したものの、アタック前の最終コーナーで四輪脱輪の判定を受け、タイムが抹消されるという予想外のトラブルで、チームにとっては苦しいスタートとなりました。

3番目に登場した東京ヴェルディレーシングは、2024年スーパーフォーミュラードライバーの木村選手と、スーパーフォーミュラーの舞台でエンジニアとして活躍する兒島選手が出走。コース状況を的確に判断し、5位と6位の中団ポジションをしっかりと確保しました。

4番手は名古屋OJAの武藤選手が登場。会場全体が注目する中、TGRコーナー、コカ・コーラコーナーをスムーズかつ大胆に走り抜け、鬼門のダンロップコーナーとGR Supraコーナーでは、ゲスト解説の大嶋選手も思わず唸るほどの美しいコーナリングを披露。暫定トップタイムを0.6秒も更新し、堂々のポールポジションを獲得しました。

続く小出選手も、ダンロップコーナーまで武藤選手に匹敵する走りを見せましたが、惜しくも小さなミスでタイムロス。しかしながら、見事暫定2位に位置し、名古屋OJAの強さを示しました。最後に登場したSaishunkan Sol 熊本。荒川選手はアウトラップでのコースアウトにより苦戦を強いられましたが、前日好調だった黒澤選手が安定した走りで小出選手を上回るタイムを記録し、名古屋OJAの間に割って入る2位という好結果を残しました。

武藤選手のポールポジションは多くの方が予想されたかと思いますが、2位の黒澤選手の走りは、まさに“素晴らしい”の一言。決勝で黒澤選手が武藤選手を逆転するのか、注目が集まりました。

接戦が繰り広げられたスプリントレース①

迎えた決勝レース。スタートでは小出選手の蹴り出しが良く、一瞬スリーワイドの展開になりましたが、武藤選手との同士討ちだけは避けたかった小出選手は引き、トップスリーは予選通りのオーダーに落ち着きました。

1周目は、各選手にとってタイヤの熱入れが難しく、簡単にはオーバーテイクできない状況でしたが、なんと予選最下位の小此木選手が一気に4台を抜いて6位に浮上。さらに2周目のTGRコーナーで小出選手が黒澤選手をオーバーテイクし、リアルドライバーとしての意地を見せました。

その後、中団では木村選手と小此木選手の激しいバトルが繰り広げられつつも、均衡状態が続きます。レースが動いたのは7周目。黒澤選手がホームストレートで小出選手の背後につき、OTSを使用。それに反応した小出選手もOTSを使用しましたが、スリップストリームの恩恵を受けた黒澤選手が小出選手に並びかけました。

ブレーキングでなんとか小出選手が黒澤選手を抑えましたが、小出選手はこのタイミングでOTSを切ってしまい、OTSを使い続けた黒澤選手がコカ・コーラコーナーで見事にオーバーテイク。名古屋OJAとしては悔しいシーンとなってしまいました。

レース後、小出選手は「1コーナーを抜けた後で黒澤選手もOTSを切ってくるだろうと思い、OTSを切ってしまった結果、抜かれてしまいました。次戦以降もスーパーフォーミュラーを使ったレースがあるので、もっとチームと密にコミュニケーションを取って、同じミスをしないよう改善していきたい」とコメントを残しています。
その後、小出選手はなんとか黒澤選手に食らいつこうとしましたが、黒澤選手が見事に逃げ切って2位を獲得。開幕戦から名古屋OJAの牙城を崩すことに成功しました。

チームプレイで名古屋OJAが勝利したスプリントレース②

続くGT3車両とスパ・フランコルシャンの組み合わせで行われたスプリントレース2では、各チームがそれぞれ異なる車両をチョイスして参戦。
各車両の特徴としては、Ferrariは総合力、Audiはコーナリング、マクラーレンはストレートスピードが優れるという三者三様のマシンバランス。これらの選択が決勝にどう影響するか、注目が集まりました。

迎えたスプリントレース②では、レース①同様に小出選手がスタートを決め、ケメルストレートで小出選手、瀬田選手、黒澤選手によるスリーワイドのスリリングなバトルが展開。ストレートエンドで小出選手がブレーキング勝負を制し、2位を奪取。名古屋OJAの1-2体制が構築されました。

さらに、このレースから参戦の群馬ダイヤモンドペガサスの浅賀選手が、スタートから半周で10位から5位にジャンプアップ。他チームとのポイント差を縮めるため、さらに上位を狙います。

レース中盤、GT3車両に慣れ親しんでいる武藤選手は後続を突き放すかと思われましたが、小出選手が常に1秒以内をキープ。これは武藤選手のペースが遅いわけではなく、小出選手にスリップを与え、3位以下から小出選手守るという名古屋OJAのチームプレイ。その影響もあり、黒澤選手はなかなか小出選手に仕掛けられない展開となりました。
ただし、スリップを受けている小出選手にとっても楽な状況ではなく、ダウンフォース抜けでグリップ感やブレーキングが難しく、高速コーナーをクリアするには非常に神経を使う必要がありました。そこはプロドライバーとしての経験値で見事にカバー。最終ラップの最終コーナーで黒澤選手が仕掛けましたが、小出選手が見事に抑えきり、名古屋OJAが1-2フィニッシュを達成しました。

レース後、黒澤選手は「ペースとしては小出選手に挑める手応えはありましたが、同じ車種ということもあり、なかなか仕掛けるのが難しかった。また、自分の経験値がまだ浅く、バトルの引き出しが少なかったと感じました。次戦に向け、もう少しバトルの引き出しを増やせるよう、チームメイトの荒川さん、大滝さんと練習したい」とコメントを残しています。

激しい戦いとなったセミ耐久レース

セミ耐久は35分間のレースで、1台のマシンを2人でシェアするフォーマット。ピットインや給油の計算といったスプリントレースにはない要素もあり、各チームの総合力が試されます。

スタートでは、東京ヴェルディレーシングの佐々木選手がブレーキングで武藤選手に並びかけるも、アウトから立ち上がる武藤選手が先頭をキープ。しかしその直後、佐々木選手がオールージュの登りでまさかのスピン。ウォールにヒットし、マシンはサスペンションにダメージを負ってしまいました。

レース後、チームメイトの兒島選手にお話を伺ったところ、「登り区間で少し無理をしてしまい、タイヤに熱が入りすぎたかもしれません」とのこと。わずかなオーバーヒートがクラッシュに繋がってしまったようです。

この間隙を縫って2位に浮上した遠州ハママツモータースの田中選手。しかし2周目には、Saishunkan Sol 熊本の黒澤選手がオーバーテイク。さらに後方から群馬ダイヤモンドペガサスの浅賀選手も迫り、苦しい立場となった田中選手は4周目の高速左コーナー(18コーナー)でスピンし、マシンを横転。これで5台中2台がクラッシュするというサバイバルレースの様相を呈してきました。

6周目、膠着状態だった2位争いで浅賀選手が黒澤選手をオーバーテイクし、2位で小山選手にバトンを渡します。前方では、武藤選手が後続に10秒以上の差を築き、後半スティントは小出選手が担当。

Saishunkan Sol 熊本は、黒澤選手から大滝選手にドライバーチェンジ。大滝選手は小山選手を攻め立て、接触もありながら11周目に2位を奪還。
小出選手は守りに入ることなく攻めの姿勢を貫き、最終的に名古屋OJAは2位に23秒差をつける“横綱相撲”で、開幕ラウンドから大量ポイントを獲得する形で締めくくりました

最後に

以上、UNIZONE開幕戦のレポートをお届けしました。
名古屋OJAはほぼフルポイントを獲得し、2位の再春館製薬sol熊本に対して早くも大きなリードを築く形に。年間チャンピオン獲得に向けて、これ以上ない滑り出しとなりました。しかし、もちろん他チームもこのままでは終わらないでしょう。次戦以降に向けて戦略を練り、意地と意地がぶつかる展開になることは間違いありません。
次戦でどんなドラマが待っているのか、今からとても楽しみです。
皆さんも、ぜひご期待ください!

(レポート:SUOMIAAKI

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