「UNIZONE 2025 Rd.2」競技レポート
国内で唯一JAF(日本自動車連盟)の公認を受けたeモータースポーツ大会「UNIZONE」を運営する一般社団法人日本eモータースポーツ機構(以下「JeMO」)は、4月29日(祝)にビエント高崎 ビッグキューブにて2025年リーグ第2戦目を実施しました。
今回はオンラインでの「HOME&HOME」形式で開催し、選手は全国の各チーム拠点よりオンラインで参戦しました。
熱狂に包まれた各チーム拠点
今回は各チームの拠点に来場者を迎え、会場ごとに異なる熱気とチームカラーに彩られた空間が広がりました。名古屋、熊本、東京、浜松、群馬といった各地の会場では、それぞれのホームチームを応援するファンが集い、地域に根差した応援スタイルや演出が展開され、まるで地元開催のレースイベントのような一体感が生まれました。選手紹介ではドライバーに大きな歓声が上がり、ピット戦略やオーバーテイクのたびに拍手とどよめきが起こるなど、eモータースポーツならではの臨場感が存分に発揮されました。
また、レース以外のイベントも充実しており、家族連れを中心に各会場が大いに賑わいました。浜松では地元の地ビールや肉料理が振る舞われ、来場者の舌と心を満たし、名古屋OJAの拠点では、レース業界で幅広く活躍する“きのちゃん”こと後藤佑紀さんがMCとカメラの二刀流で会場を盛り上げました。東京会場ではカート実況でおなじみの稲野一美さんが臨場感あふれる実況でレースを盛り上げ、熊本では地元出身のアイドル・森﨑冴彩さんが応援に駆けつけるなど、チームごとの特色が際立った演出で観客を魅了しました。
このように、会場のファンの皆様とチームが一体となったことで、画面越しのレースでありながらも、まるでサーキットにいるかのような熱狂と高揚感が全国各地で生まれました。
Rd.2を控えた選手たちの意気込み
開幕戦を終えRd.2を控えた各チーム、選手へ意気込みを伺いました。
遠州ハママツモータース
山岸代表「瀬田選手の活躍で今シーズンの目標であるチームランキング3位で開幕戦を終えられて良いシーズンのスタートになったと思います。第2戦以降も着実にポイントを重ねて、より上の順位を目指します。」
瀬田選手「今の自分たちのパフォーマンスをより安定させて、本番で発揮するという事を重視して準備をしてきました。」
田中選手「セミ耐久でミスをしてクラッシュをしてしまったので、Rd.2ではしっかりと車を持って帰ってポイントを取っていきたい」

群馬ダイヤモンドペガサス
小此木選手「開幕戦は自分にとっては悪夢のようでした。SFという自分にとって主戦場のような組み合わせで予選ノータイム。レースでも思うようにオーバーテイクできず、多くのポイントを取りこぼしてしまったと感じています。Rd.2でもSFでのレース(スプリント2)は任せて頂けるので、今度こそいい結果をチームに持ち帰りたいと思います」

Saishunkan Sol 熊本
荒川選手「なかなか大舞台でやることがなく、緊張してしまい本来の走りが出来なかった。黒澤選手はどの車に乗っても安定感があるので、Rd.2ではあえて違う車を選び、特性を活かしたレース運びをしたい」
黒沢選手「個人としては全戦表彰台で、慣れないオフライン環境でもチームに貢献することが出来て、とりあえずほっとしています。Rd2ではリバースグリッドもあるので、どのグリッドになっても出来るだけ有利になるように戦略立てて予選に挑みたいと思います。」
大滝選手「今回UNIZONEに出場する事が決まり始めたiRacingは慣れるまで凄く時間が掛かりました。 開幕戦ではiRacingの特性をある程度掴んでいましたが、熟知度が100%ではなかった為、少し苦戦しました。今回UNIZONEのリーグでは、車種はもちろんマシンセッティングも制限がなく、プレイヤーの差に加えて、セットアップ能力も試される為、またそれが影響する割合がとても高いです。 開幕戦ではセットアップの詰めが少し甘かったと感じていたので、Rd2ではそういう部分にもかなり力を入れて対策してきました。」

東京ヴェルディレーシング
木村選手「チームとしてのスピードは遅れを取っているわけではなかったが、結果としてまとめ上げる部分で足りない所があり、歯車が噛み合わなかった開幕戦でした。非常に悔しかったです。チームメイトの佐々木光選手のスピードはズバ抜けて最高ですし、兒島選手の分析力は非常に高くチームの底上げに大きく貢献してくれています。自分はこのふたりがいなければ今のパフォーマンスを発揮することは出来ないと思っております。Rd.2では自分自身のパフォーマンスを最大限発揮する事に集中しています。その上で結果が後からついてくるものですし、とにかく今は周りを気にするよりも自分自身と向き合うことに専念している感じです。」

名古屋OJA
小出選手「予選はまとめることができず3位からのスタートとなってしまったので、Rd.2では最低でも2位を取りたい。前大会はパーフェクトなポイントを取れなかったので、今大会こそはフルポイントを獲得したいと思います。リバースグリッドに関しても、オーバーテイクシステムを駆使すれば、最後尾からのスタートでも武藤選手と1,2フィニッシュできると考えています」
武藤選手「自分としては3連勝といい結果で終わることができましたが、まだまだセット面などでパフォーマンスは向上できると思うので、その点をリザーブの斎藤選手含め3人でしっかりと煮詰めていきたい。リバースグリッドは確かに私たちにとっては向かい風になるかもしれませんが、与えられた条件でしっかりと結果を出していきたいと思います。」

大会初のGT3車両での予選

フォーマット
コース | シルバーストン・サーキット |
車両 | GT3車両10車種から選択 |
周回数 | アウトラップ1周・アタックラップ1周 |
スタート方式 | スーパーラップ |
出走選手表
出走選手 | 所属チーム |
---|---|
田中 健太 選手 | 遠州ハママツモータース |
瀬田 凛 選手 | 遠州ハママツモータース |
浅賀 颯太 選手 | 群馬ダイヤモンドペガサス |
小山 美姫 選手 | 群馬ダイヤモンドペガサス |
佐々木 光 選手 | 東京ヴェルディレーシング |
木村 偉織 選手 | 東京ヴェルディレーシング |
武藤 壮汰 選手 | 名古屋OJA |
小出 峻 選手 | 名古屋OJA |
荒川 麟 選手 | Saishunkan Sol 熊本 |
黒沢 和真 選手 | Saishunkan Sol 熊本 |
開幕戦に引き続きスーパーラップ形式の予選方式で、今回はSF23車両ではなく、GT3マシンでの予選となりました。今回は年間ランキング下位からの出走となり、トップバッターは東京ヴェルディレーシングの佐々木選手。やはり開幕戦と同様、トップバッターの選手は手探りの中での予選となり、少し置きに行き過ぎた走りになってしまった印象。表情にも悔しさをにじませていました。しかし続く木村選手はフェラーリ296のポテンシャルを引き出した走りを見せ、2:00.840と2分台にタイムを入れてきました。
続く群馬ダイヤモンドペガサスの浅賀選手は、直線で分のあるBMW M4での走行。直線区間では全体ベストを叩き出すも、テクニカル区間でトラクションに苦しみ惜しくも2位タイムとなってしまいました。続く小山選手は計測すぐのコーナーで4輪脱輪となってしまい残念ながら、ノータイムとなってしまいました。
3チーム目の出走となったのは遠州ハママツモータース。開幕戦の予選ではトップバッターということもあり苦しんだ田中選手。今回の予選では9番手タイムであったものの、前とのタイムも近かったということもあり、今後のレースに向けて自信になったとコメントしておりました。続く瀬田選手は、シルバストーンと相性のいいNSXGT3でまずまずのタイムを記録。開幕戦に引き続き上位グリッドを獲得しました。
4チーム目はSaishunkan Sol 熊本。開幕戦では満足な走りができなかったとコメントしていた荒川選手は、ウォームアップの難しいマシンをうまくコントロールし、暫定2位を獲得。続く黒澤選手も、荒川選手のフィードバックを活かしフロントタイヤにしっかり熱を入れることにより暫定1位を獲得しました。
最後の出走となったのは名古屋OJA。開幕戦圧巻の走りでポールを獲得した武藤選手は、NSXのアドバンテージを十分に発揮し、すべてのセクターで全体ベストをマーク。暫定2位の黒澤選手に1秒以上の差を付ける唯一2分切りを達成。続く小出選手もタイトなスケジュールであまり練習することができなかったと語っていた中で、開幕戦の悔しさを晴らす2位を見事獲得し、予選では見事名古屋OJAがワンツーを獲得いたしました。
まさかのアクシデントが起きたスプリントレース①

フォーマット
コース | シルバーストン・サーキット |
車両 | GT3車両10車種から選択 |
周回数 | 6周 |
スタート方式 | グリッドスタート |
出走選手表
出走選手 | 所属チーム |
---|---|
田中 健太 選手 | 遠州ハママツモータース |
瀬田 凛 選手 | 遠州ハママツモータース |
浅賀 颯太 選手 | 群馬ダイヤモンドペガサス |
小山 美姫 選手 | 群馬ダイヤモンドペガサス |
佐々木 光 選手 | 東京ヴェルディレーシング |
木村 偉織 選手 | 東京ヴェルディレーシング |
武藤 壮汰 選手 | 名古屋OJA |
小出 峻 選手 | 名古屋OJA |
荒川 麟 選手 | Saishunkan Sol 熊本 |
黒沢 和真 選手 | Saishunkan Sol 熊本 |
迎えた決勝レース。スタートでは武藤選手が無難にスタートを決めたものの、小出選手の蹴り出しが悪く、後続の黒沢選手と瀬田選手が仕掛ける構えを見せたところ両者が接触し、黒澤選手は不運にも再開へ。また東京ヴェルディレーシングの佐々木選手と木村選手がまさかの同士討ち。順位を大きく下げることになってしまいました。その混乱をうまく抜けた浅賀選手は5位まで順位を上げ前の荒川選手に襲い掛かるも、BMW M4とマシンの相性があまり良くないこともあり、なかなか前の荒川選手を捉えることができませんでした。またその荒川選手もペースはいいものの、マシンのバランスに苦しみ自己最高位ではありましたが、惜しくも4位と表彰台は逃す結果となりました。
最終的には、スタートでリードを築いた武藤選手がそのままトップをキープし、小出選手も序盤の混乱をうまく回避しながら安定した走りで2位を確保。名古屋OJAのワン・ツーフィニッシュという形で、混戦を制したレース1となりました。
UNIZONEではじめてのリバースとなったスプリント②

フォーマット
コース | 鈴鹿サーキット |
車両 | Super Formula SF23 – Honda Super Formula SF23 – Toyota |
周回数 | 8周 |
スタート方式 | グリッドスタート |
出走選手表
出走選手 | 所属チーム |
---|---|
田中 健太 選手 | 遠州ハママツモータース |
瀬田 凛 選手 | 遠州ハママツモータース |
小此木 裕貴 選手 | 群馬ダイヤモンドペガサス |
小山 美姫 選手 | 群馬ダイヤモンドペガサス |
兒島 弘訓 選手 | 東京ヴェルディレーシング |
木村 偉織 選手 | 東京ヴェルディレーシング |
武藤 壮汰 選手 | 名古屋OJA |
小出 峻 選手 | 名古屋OJA |
荒川 麟 選手 | Saishunkan Sol 熊本 |
大滝 拓也 選手 | Saishunkan Sol 熊本 |
スプリントレース②では、シリーズ初採用となるハーフリバース方式が導入され、下位グリッドの選手たちにもチャンスが広がるスターティンググリッドとなりました。
ポールポジションの大滝選手は好スタートを決め、加速時にやや車が暴れる場面も見られましたが、1コーナーで何とかトップを死守。しかしその直後、4番手スタートの小出選手が鋭い蹴り出しで一気に2番手まで浮上。一方、僚友の武藤選手はスタートで大きくホイールスピンし、ポジションを大きく落とします。その影響を受けた遠州ハママツモータースの田中選手は回避の際にトラクションを失い、無念のクラッシュ。また、1コーナーでは黒澤選手と小山選手が接触。小山選手はそのままリタイアとなり、黒澤選手は2レース連続でのスタート直後のアクシデントに苦しむ展開となってしまいました。
そんな波乱の1周目、9番グリッドからスタートした小此木選手がデグナーまでに驚異の6台をオーバーテイクし、3位まで一気に浮上。得意のSUPER FORMULAで大量ポイント獲得を狙います。さらに実車経験豊富な木村選手も、堅実な走りで5位に浮上するなど、経験の豊富なドライバーの力が光る展開となりました。
勢いに乗る木村選手は2周目の最終コーナーで瀬田選手を攻略。さらに3周目には小此木選手がオーバーテイクシステムを駆使して大滝選手をパス。
わずか3周で7台抜きという圧巻のオーバーテイクショーを披露しました。
その後、3位を走る大滝選手に対し、木村選手と武藤選手が猛追。7周目の1コーナーで木村選手が大滝選手に勝負を仕掛けましたが、まさかの接触により木村選手はバリアにヒットし、無念のリタイア。ここまでの好走が光っていただけに、非常に悔しい結末となりました。
一方、混乱を冷静に見極めた武藤選手はS字区間で大滝選手をパス。スタートの出遅れを挽回し、見事に表彰台圏内まで復帰しました。 トップを快走していた小出選手は、そのまま初優勝かと思われましたが、スタート時に瀬田選手との接触が審議対象となり、10秒のタイムペナルティが下されます。これにより、2位でフィニッシュした小此木選手が繰り上がりで1位に。自身初勝利とともに、所属チームである群馬ダイヤモンドペガサスにとってもUNIZONE初の勝利をもたらす快挙となりました。
次世代の可能性を感じさせられたセミ耐久レース

フォーマット
コース | 鈴鹿サーキット |
車両 | Super Formula SF23 – Honda Super Formula SF23 – Toyota |
周回数 | 25分 |
スタート方式 | グリットスタート |
出走選手表
出走選手 | 所属チーム |
---|---|
田中 健太 選手 | 遠州ハママツモータース |
瀬田 凛 選手 | 遠州ハママツモータース |
小此木 裕貴 選手 | 群馬ダイヤモンドペガサス |
小山 美姫 選手 | 群馬ダイヤモンドペガサス |
兒島 弘訓 選手 | 東京ヴェルディレーシング |
木村 偉織 選手 | 東京ヴェルディレーシング |
武藤 壮汰 選手 | 名古屋OJA |
小出 峻 選手 | 名古屋OJA |
大滝 拓也 選手 | Saishunkan Sol 熊本 |
黒沢 和真 選手 | Saishunkan Sol 熊本 |
大会の最後を締めくくるのはセミ耐久レース。SUPERFORMULAマシンで行われる珍しい耐久レースとなりました。
スタートでは、スプリントレース②で悔しいミスを犯していた武藤選手が、その雪辱を果たすかのように完璧なスタートを決め、ポールポジションからしっかりとトップをキープ。一方で、遠州ハママツモータースの田中選手は蹴り出しに若干のロスがあり、スタート直後にポジションを落とし、5位まで後退してしまいます。
レースはそのまま、開幕戦でも見せた武藤選手の独走劇が再び繰り広げられるかと思われました。
しかし、Saishunkan Sol 熊本の黒沢選手がそれを許しませんでした。黒澤選手はスタートから鋭い加速を見せ、序盤から武藤選手に肉薄。1周目の後半からは常に1秒以内の差を維持し続け、まさに背後からプレッシャーをかける展開に。わずか17歳という若さながら、黒澤選手のドライビングは驚異的で、世界最高峰の舞台で数々の実績を積んできた武藤選手に一歩も引けを取らない走りを見せました。抜群の集中力と冷静な判断力を発揮しながら、チャンスを狙い続けるその姿には、次世代のe-motorsportsドライバーとしての資質と可能性が色濃く表れていました。
レース中盤、先に動きを見せたのは名古屋OJAの武藤選手。絶妙なタイミングでピットに入り、小出選手へとバトンを託します。これに対し、Saishunkan Sol 熊本の黒沢選手はステイアウトを選択。チームメイトの大滝選手によるアンダーカットの可能性に賭け、全力でラップタイムを削りにかかります。オーバーテイクシステムを駆使しフルプッシュ。すべては逆転の一手となるはずでした。
しかし、ドラマはその直後に待ち受けていました。黒沢選手のピットインは、映像で見てもギリギリのブレーキング。誰もが息を呑む中、まさかのオーバースピードにより、30秒のタイムペナルティが加算されてしまいます。この痛恨のミスにより、Saishunkan Sol 熊本は一転して後方に沈み、優勝争いから完全に脱落。あまりにも悔しい展開となってしまいました。
変わって注目の2番手争いは、群馬ダイヤモンドペガサス、遠州ハママツモータース、そして東京ヴェルディレーシングの三つ巴に。スプリント②で惜しくもクラッシュを喫した木村選手でしたが、西ストレートで小山選手のブロックのさらにイン側を突くという紙一重のオーバーテイクを成功させ、リアルドライバー同士の激しいバトルを制して、4位から2位へとポジションアップ。スプリント①、②と苦しい展開が続いていた東京ヴェルディレーシングにとっては、待望の初表彰台となりました。 そして、武藤選手からバトンを受けた小出選手は、ラストに1分34秒173という驚異的なラップを叩き出し、ポール・トゥ・ウィンに加えてファステストラップも獲得。スプリント②の雪辱を果たす、完璧なレース運びを見せました。
以上、UNIZONE第2戦の模様をお届けしました。
今回も名古屋OJAが安定した強さを発揮し、ランキング首位の座を堅持。ポイント差はさらに広がりつつあり、このままチャンピオンを決めてしまうのか注目されます。
とはいえ、シリーズは次戦が折り返し地点。後半戦に向けて、巻き返しを狙う各チームが牙を研いでいるのも確かです。勢いに乗る名古屋OJAを止めるチームが現れるのか、それともこのまま突き進むのか。次戦の展開が、今季の行方を大きく左右することになるでしょう。
次なるステージで、どんなドラマが待っているのか。引き続き、UNIZONEにご注目ください!

(レポート:SUOMIAAKI)